第176章 抱っこして歩いた方が、少し早いよ

小泉大輔はちらりと振り返った。南雲玲奈は今まさに、靴を引っこ抜こうと必死になっている。

――だが、ヒールががっちり挟まってしまっていた。

いくら引っ張っても、びくともしない。焦りが顔に滲む。

まるで向こう側に誰かがいて、綱引きでもしているみたいで――玲奈は思わず小さくぼやいた。

「……引っぱらないでよぉ……」

後ろにいた西野亮平が、つい堪えきれずに、

「ぷっ……」

と吹き出した。

南雲さんと知り合って長い。いつも落ち着いていて、隙のない人だと思っていたのに。

こんなふうに子どもみたいにむきになる姿は、初めて見た。

笑い声が耳に入ったのだろう。玲奈は動きを止め、不満げに振り...

ログインして続きを読む